接客業はつらいよ! あけすけビッチかんどー日記!

昭和のメスの生き残りとして、ぎりぎりまで足掻く35過ぎ、おんな盛り。特技は人を愛することです。継続性はございません。

飲む拘束具で、悪夢を見ながら眠った夜

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飲む拘束具、という異名を持つその薬を、わたしはもう10年くらい処方されている。

 

いつも飲む薬ではない。生理前のイライラでどうしようもない時、間違って勢いで自殺したりしないように「危なくなったら飲め」と言われている。その薬を飲むと、文字通り「拘束」される。コロッと眠ってしまうのだ。

 

 

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翌朝は悪夢を見て汗びっしょりで目を覚ます。

 

悪夢はゴキブリの大群に襲われる夢だったり、大好きな国で人と殺し合わなければならない夢だったりする。本当に嫌な夢を見る。

 

 

 

わたしは普段、ポジティブで明るい性根をもっている。しかし、生理前だけは違う。思いと裏腹なことを口に出してしまい、人との関係がまずくなる。だからわたしはここ数年、生理前には人と会わない。

 

ピルの残量を計算して、生理前の時期以外に会う約束をする。わたしは子宮のせいで、人生の半分、楽しいことができないからだである。

 

 

さて、わたしが「飲む拘束具」を飲むようになったのは、まだわたしが派遣会社で働いていた頃だ。完全歩合制の仕事でならしたわたしは、販売力と営業力を武器に、時給の交渉をして、わりといい時給で(二千円以上)働かせてもらっていた。

 

やるのは、販売だ。

 

出店のような場所での販売もあれば、実演販売もやった。メインは量販店やモールでの販売だった。

 

 

あるとき、わたしあてにクレームが入った。わたしから買ったが、説明が足りなかったから返品する、その店員をクビにしなければ消費者センターに言いつける、話を大きくしてやる、というものだった。

 

わたしはその話を聞き、明らかにおかしいと思ったので、そのお客様と会いたいと申し出た。休日でもかまわない、とにかく会って、どの部分がどう伝わらなかったのかをお聞きし、どこかわかればわたしから謝罪をしたい、と伝えたのだ。

 

しかし、客は当初の意志を曲げず、わたしのいない日にしか店に来なかった。わたしのいない日に、長時間クレームをつけて帰るので大変だったのであろう。その店でわたしは「出入り禁止」となり、客にはわたしをクビにしたと伝え、事なきを得たらしかった。

 

 

わたしは激昂した。

 

 

なぜ戦わないのか。店員は、客が黒と言ったら黒なのか。弁明の余地もなく首を切られるのか、おかしくないか。

 

派遣会社の人も困り果てており、疲れが見えた。彼らも激務だ。

 

「かんどーさんには、もっと合う現場を紹介しますし、僕らはかんどーさんを信じています。でも、僕らにはこれ以上できません。ごめんなさい」

 

彼らは、時給はそのままで、わたしを茨城県への短期出張の仕事に回してくれた。通勤に時間はかかるが、適度に緑があって空気のよいその現場は、わたしに合っていた。お客さんも、気性は荒くても「何かあればその場で本人に言う」人で、少しの食い違いでもその場で、お客さんとわたしの間で話すことができ、最終的にすごく仲良くなれることが多かった。近所づきあいのある地域では、人格否定系のクレームは少ない。店員も隣人である可能性があるからだ。

 

しかしわたしは、わたしを出入り禁止にした客とその店を許すことができず、街で暴れたりした。精神病院へ連れていかれたわたしに、「これでイライラをおさえなさい。車の運転はしてはいけないよ」と長時間の説明のあと、処方されたのが始まりだ。

 

 

 

 

時は流れ、その後は理不尽なクレームで出入り禁止にされるようなことは無くなったが、年に一度くらいは、ウチのスタッフがその手のクレームをもらってしまう。流れ弾のようなものだ。

 

ウチの会社では、スタッフが言葉を荒らげることは絶対無いと言い切れるし、間違えることはあっても、ダメなことは絶対しないと信じられる。

 

なので、会社として謝罪を求められても

 

「本当に、うちのスタッフがそのような言動をしたのか、お客様に直接会ってお聞きしたいです。その上で、やはり落ち度があったのならば、その場で謝罪をいたします」

 

と言っている。最初から謝りに行きますとは絶対言わない。そんなことをしたら、わたしがスタッフを信用していないみたいになってしまうし、一時しのぎの謝罪は、確かに早い解決であるが、わたしはこの「お客様は何を言っても許される」流れに反対であるので、申し訳ないが、それはできないのである。

 

 

 

さておき、わたしは今でも現場で働いている。もちろん販売員だ。

 

しかし、状況はいろいろ変わった。接客業の現場において、「しまむら土下座問題」や教育の現場における「モンスターペアレンツ問題」、そして駅員を怒鳴る高齢者の問題などが連続で取りざたされた。

 

また、初めてのデートで男性のどこを見るか、で「店員さんに高慢な態度を取る」はかなりのマイナスポイントであると各誌、各メディアが取り上げた。

 

これにより、店員は少しだけ権利を持った。嫌なことをされたとき、とっさに「申し訳ありません!」と頭を下げるのではなく「これはおかしいな」と考える余裕ができた。

 

 

あとは時間が少しずつ、このバカげた風潮を流してくれるだろう。わたしは丁寧な接客ながら、言いなりにならない「自己を持った丁寧な接客」を自分の中に作れたし、そうそう接客で落ち込むこともなくなった。

 

 

 

…この感じなら、接客業の現場に立つために、薬を飲み続ける必要もなくなった。

 

 

かつて、自分が悪くなくても謝らなければならないとされていた頃、わたしは謝らされるたびに「飲む拘束具」と呼ばれる薬を飲み、暴れそうになる心をおさえて売り場に立っていた。もちろん眠くなるが、立ち仕事なので最悪倒れることができる。倒れたらどこかへ運んでもらえるだろう。気を失ったら勝ちだ。

 

一番良くないのは、ギリギリまで我慢して立ち続けることだと思っている。そういう人が電車に飛び込む。

 

わたしは「飲む拘束具」を飲みながら仕事をする道を選んだ。

 

 

人格を否定するような罵声を浴びせられてイライラが止まらないとき、何錠もその薬を口に入れた。最終的に、カウンターにつっぷしたまま動かなくなったわたしを、誰かがバックヤードに運んでくれた。わたしは、罵声を子守唄がわりに眠ってしまった。1時間くらいして意識が戻りそのまま早退となった。表向きは「貧血」となっていた。

 

わたしは「飲む拘束具」のおかげで、一番苦しい時期の接客業を「貧血持ち」ということで、一定のイライラを超えたら(薬の量が一定量を超えたら)その場に倒れこんでいる。立ったまま「おい!」と怒鳴り付けられ、一時間近く人格否定をされたこともある。その時も、ポケットから薬を出して、二錠一気に水無しで飲んだ。

 

そのときは、そのままぺしゃんとその場にしゃがみこんだまま立てなくなった。そのときは医務室に運ばれて、三時間ほどグーグー眠ってしまった。そしてそのまま帰宅した。

 

 

当時の精神的ストレスは毎日、ハンパじゃなかった。

 

 

今は、生理前でどうしようもない時だけその「飲む拘束具」を飲んでいる。飲むとひどい悪夢を見るが、確実に眠れるところが良い。あと、嫌なことから一瞬逃げられること。

 

生理前は仕方ないけれど、もう仕事から逃げるためにこの薬を飲むことはしたくない。今は仕事が楽しいので、そんなことはなさそうだけれど。

 

ちなみにその薬は「サイレース」と言います。

 

とてもよく眠れるのですが、わたしには少し強すぎる薬です。

 

それじゃあ、また明日。